平成20年度抜初式

平成20年1月27日、千葉県佐倉市の佐倉中央公民館にて平成20年抜初式が挙行された。抜初式は旧藩時代から続く伝統行事で、書道で言うところの書初めにあたり、藩主の列席の下、正月に行われていたが、現在は首長の列席のもと、1月の最終日曜日に行われている。開催場所は佐倉市および八街市が交代で務めており、本年は佐倉市中央公民館で行われた。

抜初式には、市民に対し、わが国固有の文化である武術の認識を深め、また門人の後学に資するために、例年古武道振興会の流派を招待して演武の披露をいただく習慣がある。今年は鎌倉時代から武家の礼法を司る小笠原流御一門に招待演武を引き受けていただくことができた。小笠原流は流鏑馬を伝える流儀としても大変有名であり、今回は木馬からの弓射が演武された。
この方法は騎射を行う前の段階の稽古でもあるとのことで、弓射の際に馬と接触している箇所は鐙(あぶみ)だけであること、この姿勢から弓の反動をうまく受け流して落馬を防ぐ方法などが説明され、流鏑馬で見せる華麗な騎射が高度な技法の結晶であることを見て取ることができた。


招待演武:木馬を使用して説明をいただく。騎射の場合は一瞬で通り過ぎてしまうため、すべてを見て取ることは難しいが、精緻な技術の結晶である

立身流からは例年のとおり、門人の演武が行われ、各人の日ごろの鍛錬の成果を披露することができた。当流は毎年入門者に恵まれ、熱心に稽古を続ける方が多い。年来の門人といえどもうかうかしていると追い抜かれかねないため、良い形での切磋琢磨が続いている。全く幸いなことである。

難易度の高い二刀詰合を演じる。若手、中堅の上達がとても速い



小太刀で鑓に対処する。一見不利に見えるが、懐に入れれば小太刀に利がある。

本年は初めて形試合が披露され、剣道六段と七段の演者が事前に取り決めをすることなく剣術の形を演じた。つまり、受方は仕方の出方に瞬時に対応しなければならないため、形が完全に身についていなければこなせない高度な形稽古である。主に上段の構えから凄まじい気勢で打ちかかる仕方に対し、受方は的確な対処を繰り出し、最後まで太刀を寄せ付けなかった。より実戦に近い形の稽古の中で立身流が使われるのを見るのは、門人にとっても貴重な機会であった。


形試合:打ち合わせなしの形試合ともなるとベテランの独壇場である。試合形式で形を演じてもぴたりと決まる。

また今回は客席からの質問を受ける時間が設けられたが、高度な質問が相次ぎ、観客の視点が相当高いものであることが改めて示された。演者の一人として身の引き締まる思いであったが、的確な質問に対して答えを返すのもまた、愉快なことである。宗家自らが解説を加える一幕もあり、小笠原氏に御指導までいただいてしまったのは御愛嬌である。


礼法は..といいつつ小笠原氏にも御指導を願う

年に一度、全国から立身流の門人が集まって一堂に会するのは、単なる伝統という以上に、日ごろの稽古の成果を門人同士、また日ごろ立身流を支えていただいている方々に対して披露するためである。本年も無事に抜初式を終了することが出来、また一年の修練が始まる。修行の道に終わりは無いが、何かのご縁で道を同じくし、長い伝統に一ページを重ねることができたのは全く幸いである。

本年も立身流をよろしくお願いいたします。

帰りの新幹線の車中にて 
光藤雄一